喫茶去 草の庵

茶碗の好み

遠州流茶道の流祖、小堀遠州公。
もう亡くなってから380年くらい経つのですが、私ども学ぶ者にとっては
今もいきいきと教えが息づいています。

遠州公の遺訓というのがありまして、中に道具についての一文があります。
「数多きを羨まず、少なくを厭わず」。

でもね、一目惚れしてつい、なんてこともありますよ。
30数年もやっていると、なんだか棚いっぱいに・・・汗
茶道具は美術館で鑑賞するのがいいですね。決して手に入らない美を愛でるのが。

さて、このお茶碗は高取焼宗家十三代の作で、
漆黒の釉薬になだらかにかかる茶のグラデーションが美しく、
これを見るといつも宇宙の悠久さに思いを馳せます。

丸い形の見込み(茶碗の底です)と、かすかにざらつきのある肌が、
こんな風に見事な薄茶を点てさせてくれるのです。

自分で求めたもの、いただいたもの、
それぞれに愛情深く、使い込むうちにどれもが好みの茶碗に育っていくようです。